このごろの 写真家 中島宏章がわかります。
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松橋 利光 さんの「里のいごこち」を深読みしてみる

 生きものカメラマンの松橋利光さんが写真集「里のいごこち」を完成させ、それにあわせて相模原市博物館で写真展も行っているということで、昨日子どもたちを連れて行ってきました!

 お忙しいのに松橋さんも来てくれて、お話しすることもできました。運良く博物館の秋山さんともお話しすることが出来ました。やっぱり最近僕は博物館の剥製標本にアレルギーがあって、、、特にコウモリの剥製の気持ち悪さときたら。。。あれは訪れた人に与える印象としてはマイナスしかない!と断言できるので、それを博物館の秋山さんには伝えました。笑。

 松橋さんの写真集「里のいごこち」を読んで、いろいろと考えさせられました。僕は著者の松橋さんのことを知っているので、余計にそうなのかもしれません。この本は、松橋さんのフィールドである神奈川県相模原の里山環境で撮影された膨大な写真の中から紡ぎだされた写真物語です。松橋さんのカメラマン20周年ということで集大成的な意味合いも大きいとの印象です。松橋さんの自然に対する思い、未来の自然に対する危惧、人が自然と疎遠になりつつあることへの危惧、それを松橋さんらしく分かりやすくオシャレに一般性を持って表現されています。なので、いつもの松橋さんらしい、誰が読んでも楽しめる本になっています。ところが、本当は、込められたメッセージは非常に強く熱く、非常にストイックな過程で作り出された本だと思います。

 写真集のメッセージとしては、身近なところにもこんなに自然の物語があるんだよと、身近な自然に目を向けようよ!ということです。表面上はそういうことなんですが、もっと深い意味が隠れているんだろうなと僕は受け取りました。

 まずはタイトルの「里のいごこち」ですが、いごこちが良いか、悪いか、って松橋さんにとってたぶんとても大切な感覚なんだろうなあと。松橋さんだけでなく、人間にとって、いごこちの良さ、悪さって実はとても大切なんじゃないかって。きっと、人間がいごこちの良いなって思う環境って、里山でも生物の多様性が保たれた自然環境になるんだろうなって思います。人間が「いごこち良い」と思う基準に、エアコンとか買い物しやすいとかそんなのばっかりで、小川や雑木林など自然の要素が入って来なくなってきたら、それこそ人間自体の危機だと思うんですよね。「いごこち」は仕事をする上でもとても大切だと思うんですよね。特に僕らみたいなフリーの人間って、その仕事をするかしないか、の判断って自分でしなきゃいけないわけで。その判断基準が意外と「コイツと仕事をして心地よいか、心地悪いか」みたいなところあります。その仕事をするしないセンサーがいわば「好き嫌い」のセンサーなんですけど、そのセンサーというか嗅覚の鋭さが大切だったりするんだろうなあと思ったります。最近僕が常に思っているのは、「好き」のセンサーを磨くには「嫌い」という自分の想いを大切にしてあげて「嫌い」のセンサーも磨いてあげないといけないんじゃないかって。「嫌い」って思っちゃう自分の感情って、良くないものとして蓋を閉めていまいがちですけど、嫌いも好きと同じくらい大切な自分の感情です。感情や思いって、まさに表裏一体ですから。

 自然を守るって時に、生物多様性うんぬん、在来種を守るべきうんぬん、外来種を駆除しなきゃうんぬん、希少な生物を守ろう、など切り口は色々とありますがね。「いごこち」の良さを大切に自然と付き合って行けば、おのずと自然が保たれているって、そういう切り口って共感します。大義名分ではなく、実はとても正直な自然に対する思いですよね「いごこち」の良さって。実に松橋さんらしいと僕は思いました。

 松橋さんが「里のいごこち」のあとがきで警笛を鳴らしていたことに僕はすこぶる共感しました。今までの自然保護活動というのは結果的に、自然と人間を隔離してしまっていると、その結果、人の自然離れがが起きちゃってて、自然に興味を持たない自然に接したことのない人間が増えていくことの方が、自然環境が失われることよりも恐ろしいのだ、と。養老孟司さんの論点と共通する部分を感じますが、「結局、王というのは、どの分野の王でも、みんな同じようなことを語るものだ」ということだと思います。松橋さんは生きものカメラマンの王ですから。常に生きものに最前線で触れ合っている松橋さんだから、より切実に危機感を感じているのかもしれません。人が自然に触れ合っていれば、おのずと自然に興味が向くものと僕も信じています。自然にあるもので、掘り下げていって面白くないものなんて、絶対にありませんから。全てのものが興味深いです。自然に興味をもって接していば、頭ごなしに「命は大切なのよ!」と教える、という訳のわからない現象はなくなるような気がします。

 この本にはたくさんの生物の写真がありまして、どれも生き生きとした命の躍動の感じられる写真なんですよ。とはいえ、その中でもやっぱり松橋さんはカエルの写真が、実にいいなあ!と思わされる「何か」を持った写真作品です。そのことを松橋さんに言ったら「やっぱカエル好きだからね」と言っていました。この一言に集約されていると思います。

 

 ぜひ、皆さん一度ご覧になってください。

 ↓

「里のいごこち」松橋利光

 


 

 

 

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